ゆとりをもって始める、50代のキャリア設計：経験を活かした働き方と未来

田中さん（58歳）／製造業営業部門 管理職

かつてフルタイムで営業部門を統括していた田中さんは、離れて暮らす母親の介護が急務となり、働き方の見直しを迫られました。突然の状況変化に、これまで築いてきたキャリアを手放す不安を感じつつも、これをきっかけに新しい働き方に挑戦する決意を固めました。

まずは2週間の介護休暇を取得し、実家で介護体制の整備に集中。同時に、これまでのマネジメント経験を活かせる方法として、週4日のリモート勤務に移行し、オンライン営業への転換に取り組みました。当初はデジタルツールへの抵抗がありましたが、自主的に学び直し、若手への指導も含めた新たな役割を確立していきます。

現在は、出社を必要としない業務スタイルを築き、安定した収入と福利厚生を維持したまま、介護とキャリアの両立を実現しています。自分の強みを活かしながら柔軟に働き方を変えることで、新しい可能性に踏み出した好例です。

伊藤さん（58歳）／元システムエンジニア

長年、会社のIT部門でシステムエンジニアとして働いていた伊藤さんは、母親の軽度の認知症を機に、これまでの働き方と将来のキャリアについて真剣に考えるようになりました。「会社に縛られず、家族の時間をもっと大切にしたい」。そうした思いから、独立への一歩を踏み出します。

ITコンサルタントとしてフリーランスで活動を始めた伊藤さんは、オンライン完結型の業務スタイルを徹底。初めは営業活動や顧客獲得に不安を感じながらも、ケアマネージャーと連携しながらスケジュールを調整し、介護との両立に取り組みました。

現在ではリピート案件を中心に事業も安定し、時間の自由度が増したことで、母親との通院や生活支援にも積極的に関われるように。専門性を社会に還元しながら、家族と向き合える働き方を実現した好例です。

吉田さん（57歳）／元看護師

病院勤務の看護師として多忙な日々を送ってきた吉田さんは、50代を迎えたある日、自分の体力の限界を感じ始めました。激務が続く中で「このまま続けて大丈夫だろうか」という不安が心をよぎり、キャリアの方向性を見直すことにしました。

彼女が選んだのは、週2日の訪問看護と、残りの時間を使ったオンライン健康相談カウンセラーの複業スタイル。訪問看護ではこれまでの経験を活かして収入の土台にしつつ、カウンセラー業では自分の興味や対話スキルを活かして新たな挑戦を始めました。

体力的な負担が軽減されたことで、無理なく働き続けられるようになり、学びや自己成長の時間も確保できるように。異なる2つの仕事を戦略的に組み合わせることで、ワークライフバランスを保ちながら、看護師としての使命も継続する選択ができた好事例です。

中村さん（55歳）／元IT企業プロジェクトマネージャー

大手IT企業でプロジェクトマネージャーとして活躍してきた中村さんは、50代を迎えた頃、「もっと社会に役立つ仕事がしたい」と考えるようになりました。また、体力や健康面にも配慮し、長時間の連続勤務からメリハリのある働き方への切り替えを模索していました。

転機となったのは、自身の強みを見直したことです。これまで数々の新規プロジェクトを立ち上げてきた中村さんは、特に「課題の本質を捉え、企画として組み立てる力」に長けており、その力を活かせる場を求めて動き始めました。行政やNPOと連携しながら、社会課題に関するプロジェクトへの参加を本格化。自ら企画段階から入り込み、仕組みづくりを担うスタイルを確立していきます。

現在では、地域活性や教育支援などの分野で「中村さんに頼みたい」と直接声がかかるようになり、3〜6か月単位で参画するプロジェクトと、休息・学びの期間を交互に設けるサイクルで働いています。これまでの経験を活かしながら、自身の企画力を武器に、社会と自分の両方に価値をもたらす働き方を実現している好例です。